一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「バカは余計だって前にも言いましたけど」
「仕方ないだろ、本気でバカなんだから」
「失礼な」
咲といると目立つせいか、通りすぎていく同じ学校の制服を着た生徒たちから注目されている。
「つーか、顔色悪すぎ。どんだけ夜更かししたんだよ」
そう言いつつ私の隣に並んだ咲は、歩く速度をゆるめた。
「いろいろあるのよ、私にも」
大きく一歩を踏み出し咲から距離を取ろうとする。足が長くて歩幅が大きいせいか、すぐに追いつかれてしまった。
「いろいろ、ね。ない頭振り絞って考えてんのか」
「ホント失礼だな」
横目で睨んだって応えている様子はない。
「おーい!」
そこへ黒田くんが走ってきて咲の隣に並んだ。
「神楽さんも電車通学なんだな! 俺と咲もだよ。つーか、お前俺を置いていくなよ! こいつ、俺がトイレいってる間にいなくなってんの。ひどいよね、神楽さん!」
朝から黒田くんはマシンガントークを炸裂。今日も相変わらずだな。そう思い苦笑していると、咲にじとっと睨まれた。
「なに?」
「マヌケ面だなと」
「なっ!」