一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「めんどくさい」
泣きマネをする黒田くんに容赦のない咲。
「ひでー、めんどくさいって……! 神楽さん、なんとか言ってやってよ!」
「まぁまぁ、黒田くん、落ち着いて。私はいくからさ」
「マジで? 神楽さんって優しいんだな。惚れそう〜!」
大げさなほど明るい笑みを浮かべる黒田くん。表情がコロコロ変わるところは、なんとなくだけど花菜に似ている。
感情をストレートに表現してくれるから、憎めなくてついつい黒田くんのペースに巻き込まれてしまう。
「なにバカなこと言ってんだよ。いくぞ」
会話を裂くように咲が歩くスピードを速めた。
「なんだよ、あいつ。いきなり機嫌悪くなりやがって。じゃ、神楽さん、よろしくな!」
黒田くんはあとを追うように小走りでいってしまった。