一生に一度の「好き」を、全部きみに。
ガヤガヤしている朝の教室はわりと好きだ。グループになって楽しそうに会話してたり、ふざけ合っていたり。
黒田くんは男子たちと集まって騒いでいるが、チラチラと花菜のことを目で追っている。やっぱり本気で好きなのかな。うーん、わからない。
「おはよう、花菜」
「葵、おはよう」
挨拶を交わして何気ない会話が始まる。黒田くんに誘われたことを話すと、花菜はあからさまに眉根を寄せた。
「やっぱり嫌だよね? 黒田くんには私からちゃんと断っておくよ。だから聞かなかったことに」
「いいよ」
「うんうん、そうだよね。嫌だよね……! って、ええっ!? 今なんて?」
「いくって言った」
「ど、どうして!?」
驚きのあまり机に手をついて花菜の顔を覗きこむ私に、花菜は小さく苦笑した。
「逃げたあたしも悪かったかなぁって。お詫びってわけでもないけど、ちゃんと話さなきゃなって。そこできっぱり諦めてもらうことにする」
「あ、なんだ、そういうことか」
「当たり前でしょ、あたしが黒田とどうにかなることは絶対にないから」
そう言い切るあたり、花菜の意志の強さがうかがえる。