一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「花菜は好きな人がいるの?」
「いないよ、そんなの。でも、黒田はない」
「そっか」
そこまで否定されたら、かわいそうな気もするけど。とりあえずあとは黒田くん本人にがんばってもらうしかない。
コソッと黒田くんを廊下に呼び出して、花菜からの返事を伝えた。
「いよっしゃああ! マジでありがとう、神楽さんっ! あ、連絡先交換しよっ!」
感極まったのか、黒田くんは両手で私の手をつかんでブンブン振った。
大げさだなぁ。
なんて思いながらもされるがままになっていると、私たちの間を裂くようにスッと人影が現れた。
「俺もいくから」
え?
そこに立っていたのは咲で、いきなりそう言われてビックリした。
咲は黒田くんの手首をつかみ、動きを止めたあと私の手から引き離す。
「咲ー。お前ならそう言うと思ってたよ」
「翔のためじゃないからな」
「そう言いながらも、最終的には付き合ってくれるお前が好きだ」
「肩組むな。俺は好きじゃない」
「またまたー、咲は意地っ張りだな!」
じゃれ合うふたりはなんだかんだ言いながらも、仲がいいらしい。
「神楽さん、俺の連絡先教えるね。詳細はメッセでやり取りしよう」
「うん、わかった」