一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「おはよう」

「うん」

咲は眠たそうにあくびをしながら小さく頷いた。

「よしっ、これで全員揃ったな。じゃあいくか!」

電車に乗って四十分ぐらいの場所にあるテーマパークに向かう。四人掛けの席に向かい合って座りながら、黒田くんを中心に会話が弾む。

「楽しみだなー。花菜ちゃんは絶叫系乗れる?」

「嫌いじゃないよ」

「俺も俺も! めっちゃ好き!」

「好きとは言ってない」

「えー、いくからには乗ろうよ! もったいないじゃん」

「乗るけど黒田とは嫌だ」

「うっ。じゃあ神楽さんとならいいの?」

「まぁね」

絶叫系かぁ、乗ったことないな。遊園地にも今までいったことないし……。

「神楽さん、絶叫系乗れる?」

「え?」

どうしよう。

黒田くんはめちゃくちゃ乗ってほしそうに私を見てる。

乗ったことないとか、とても言える雰囲気じゃない。

「苦手なら無理すんなよ」

腕組みしながら外を眺めていた咲がチラッと私を見た。

聞いていないようでちゃんと聞いていたらしい。

そして苦手って見抜かれてるし。

いや、苦手というか心臓に悪そうだから乗れないというか。でもそう言うと空気が読めないヤツだよね、私って。

それに黒田くんを応援したい気持ちもあるし、花菜の気持ちも汲んであげたい。

どうすれば……。

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