一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「じゃあ次は絶叫系を攻めようか!」
「いいね、いこいこ」
レストランを出て黒田くんが先陣を切った。花菜もノリノリだ。
なんだかちょっと疲れちゃったな。本音はもう少し休憩していたい。でも……。
「お前らふたりでいけよ。俺と葵はそのへんに座ってるから」
咲がそう言い私は思わず横顔に目をやる。
「そうだな、それがいいよ。神楽さん、実は絶叫系苦手っしょ?」
「え、そんなこと」
「いいからいいから、咲に付き合ってやって。花菜ちゃん、いこっ!」
「葵、無理しなくていいから。黒田は嫌だけどアトラクションには乗りたいから、ちょっといってくるね」
「花菜ちゃん、言うね〜!」
「うるさい。いくよ、ほら」
「はーい!」
どうやら私の強がりは全員に見抜かれていたらしく、黒田くんと花菜はふたりでいってしまった。
「顔色悪いぞ。とにかくこっち来い」
黒田くんが変なこと言うから意識しちゃう。
ちがうよね?
きっと、黒田くんの勘違いだ。
気を取り直してそう思い込もうとした。そうでもしないと、緊張でおかしくなりそう。
「ごめんね、咲も乗りたかったんじゃないの?」
それなのに私に付き合ってくれているとしたら、悪い気がする。
「葵はいろいろ気にしすぎ」
木陰のベンチに並んで座り、そよそよした穏やかな風が私たちを包んだ。