一生に一度の「好き」を、全部きみに。
Heart*2
雨の日の憂うつ
ダブルデートからの週明けの月曜日。
朝は晴れていたのに、午後から雨が降り出した。放課後までしとしとと大粒の雫が降り注いで、いつまでもやむ気配を見せない。
憂うつな気分になるから雨は嫌いだ。
気分が沈むと思い出してしまう。咲に出会った、あの日のことを。
忘れたいのに忘れられない。心に染みを作ったまま、消えることなくどんどん大きくなっていく。
「……い!」
「へっ!?」
教室の窓からぼんやり外を眺めていた私は、肩をポンと叩かれてハッと我に返った。
「葵ってば、ボーッとしすぎ」
「あは、ごめんごめん」
花菜はそんな私に苦笑した。
「途中まで一緒に帰ろうよ」
「もちろん! すぐ準備するね」
花菜は電車で私も電車。偶然にも最寄り駅が同じなので、時間が合えば一緒に帰ることも増えた。
「あ、鳳くんだ」
廊下に出ると花菜の視線の先には咲がいた。
「うわ、黒田もいる。こっちに手振ってるし」
げんなりした口調だけど、心なしかその横顔はゆるんでいる。
「黒田くんと少しは仲良くなれたみたいだね」
「え、やめてー。全力で否定するわ」
とはいってもそこまで嫌そうには見えない。
咲と黒田くんは他のクラスの男子たちと輪になって騒いでいた。咲は騒ぐタイプではないから腕組みしながら立ってるだけ。
横目に見ながら通りすぎようとした瞬間、視線を感じて振り向けば。