一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「他というのは?」

「平木、余計な詮索はしないで」

「ですが」

すべてを知らなきゃ気が済まないらしい平木は、納得していない様子。

「学校での悩みですよ。極端に言うと恋煩い、とか。他にも友達関係で悩むことだってあると思います」

「ちょ、先生! なに言ってるんですか」

「こ、恋煩い……! 葵お嬢様が……?」

大きく目を見開き、黒目を揺らす平木。

「ちがうからね?」

「お嬢様が恋だなんて……」

「だからちがうってば」

「お嬢様が恋……」

私がいくら声をかけても平木には聞こえていない。フラフラとおぼつかない足取りで、廊下に出ていく。

「うふふ。平木さんったら、このまま寝込みそうな勢いでショック受けてるわね」

「先生が変なこと言うからですよ」

「変なことではないわよ。葵ちゃん、好きな人ができたら思いっきり恋していいんだからね」

「でも……」

私……。

あと五年しか生きられないんでしょ?

死んじゃうんでしょ?

「葵ちゃん?」

先生とお父さんが話しているのを聞いちゃったんだ。

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