一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「はぁ、もう……ダメ」
さっきまで全速力で走っていたせいで、体力が限界を超えている。
一度止まっちゃったら、クタクタであることを自覚してしまい、これ以上動けそうにない。
とりあえず、少し休んでから、ここを離れよう。
背中を壁に預けて、ズルズルとその場に座りこむ。一気に力が抜けて、疲れがドッと押し寄せてきた。
ペタンと地面に座りこんだまま、全身がガタガタと震えていることに気づく。
冬の名残りがまだまだ感じられる季節なのに、全身からは尋常じゃないほどの冷や汗が出て止まらない。
──ガチャ
突然、背もたれにしていたはずの壁が音を立てた。
そして次の瞬間、ガンッと鋭い衝撃が背中に走る。
「きゃあ」
壁だと思っていたそこは、どうやら建物の裏口の扉だったようで中から誰かの声が聞こえた。
「なんかに当たったんだけど」
「は?」
「なんだよ、なんかって」
「さぁ? なんだろ」