一生に一度の「好き」を、全部きみに。
ただ少し具合いが悪いだけなのかと思ったけど、ちがうのか?
かなり苦しそうで、見てられない。
大丈夫なんだよな?
「ごめん、ね……咲」
薄目を開けてじっと顔を見つめてくる葵。その目は今にも泣き出しそうなほど真っ赤に潤んでいた。いつもバカなことばっか言ってる葵とは似ても似つかない。
そんな顔、すんなよ。調子が狂うだろ。
いつもみたいに憎まれ口を叩けばいい。そしたら俺も、同じように返してやるから。
今にも消えてしまいそうな弱々しい顔は、葵には似合わない。
「とにかく今はなにも考えずにゆっくり休め。ずっとついててやるから」
安心させたくて、無意識に葵の額に手を置いた。
「咲の手、冷たくて、気持ちいい……」
目を閉じながら、小さく息を吐き出す葵。その手にはスマホが握られている。よくよく画面を凝視すると着信を知らせる画面が映っていた。
「電話鳴ってるぞ。俺が出ようか?」
「あ、大丈夫……。きっと、平木だ……今は、いいや……」
いいのか、無視して。
様子だけでも伝えた方がいいんじゃ?