一生に一度の「好き」を、全部きみに。
多分、葵の付き人ってヤツだろ?
それでも気持ちよさそうに目を閉じている葵に、電話に出ろとは言えなかった。
とにかく早くよくなれ。
葵の顔に浮かんだ汗を拭おうと、反対側の手を伸ばしたときだった。
そばに置いてた葵のスクールバッグに手が当たり、中身が床にばらまかれた。
「やっべ」
主には教科書やノート。だけどその中に薬が入った小さなピルケースがあった。
五つあるうちのフタがひとつ開いていて、錠剤がシートのまま床に落ちている。
薬?
葵のだよな……?
シートの裏に書かれた薬品名を見ても、なんの薬なのかがまったくわからない。
ドクドクと鼓動が鳴って、嫌な予感がする。
「咲……?」
やっべ。
テンパって手がすべりそうになる。それでもなんとか、床に散らばった荷物をスクールバッグに戻した。