一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「咲ー、そう俺を睨むなって」
「はぁ? 睨んでねーし」
「うそつけ、感情だだ漏れだよ。今のお前は」
すべてを見透かすような翔の瞳がムカつく。
感情だだ漏れとか、そんなの全然俺らしくない。
「でもさ、俺はうれしいよ。お前の色んな面を見れて。葵ちゃんこれからも咲をよろしくね」
「なにがよろしくだよ」
フンッとそっぽを向きながらスクールバッグを置いて椅子に腰かける。
前を向いて机に突っ伏すと、翔がクスッと笑う気配がした。
「素直じゃないヤツ。葵ちゃん、こんな男どう? やっぱり彼氏にするならもう少し優しい男の方がいいよなぁ」
彼氏というワードに思わず背筋が伸びた。
「っていうか、葵ちゃんって彼氏いるの?」
は?
いないに決まってるだろ。
葵だしな。
だけど葵はなにも答えない。
「え、なにその沈黙。もしかして本当にいるの?」
「か、翔くんはなんでそんなこと聞くの?」
葵の戸惑うような声がした。
「なんでって、気になるから」
「秘密!」
え……?