一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「あたしは絶対出ないからっ!」
「でも、他の競技に手を挙げてないよね。ひとつかふたつは必ず出てもらわないと」
「だからって、なんでクラス対抗リレーに出なきゃなんないのよっ!」
まさに一触即発。諸角さんは淡々としてるけど、瀬尾さんは感情むき出しだ。
「あたしは玉入れと綱引きに出る」
腕組みしながら高圧的な態度の瀬尾さん。
「それはもうメンバーが決まったんだけど」
「もう一回決め直せばいいでしょ。玉入れと綱引きにしか出ない人だっているみたいだし、不公平じゃない?」
瀬尾さんはちらっと私を振り返る。その目には敵意が込められているような気がした。
「お嬢様だからって、楽な競技にばかり出るのはずるいと思いまーす」
やっぱり、私に言ってるんだ……?
瀬尾さんの冷ややかな視線に心臓がドクンと跳ねた。
「神楽さんって、体育の授業もマラソンとかには出てないよね? 色んな面でどうして神楽さんだけが優遇されるの? ずるくない?」
「たしかに! 神楽さんって先生にも常に声かけられたりして、明らかに私たちとは待遇がちがうよね」
「神楽財閥のお嬢様だからじゃん? 特別枠ってやつだよ」
クラスメイトたちからの視線が私に集まる。
どうしよう……。
うまく息ができない。