一生に一度の「好き」を、全部きみに。
「吉田、お前は? サッカー部で足速いよな」
「あーまぁ、いいよ。誰も立候補しないなら、出ようかな」
咲の声かけで、あれよあれよという間に決まっていくクラス対抗リレーのメンバー。そのほとんどのメンバーが男子に決定した。
もしかして……助けてくれた?
面倒ごとが嫌いな咲が、私のために……?
いやいや、そんなはずはない。
「あと俺、綱引きやめてリレーに出るから、空いた枠に瀬尾を入れてやって」
「えっ?」
瀬尾さんは咲の言葉に目を見開いた。
そして私も、そんな咲にビックリだ。
体育祭とか一番にだるいとか言いそうなキャラなのに……。
「何気にまとまってるし、リレーのメンバー最強じゃない? 楽しみになってきたんだけど!」
「ねー、イケメンの集まりだもんね!」
咲のおかげで和気あいあいとした和やかなムードに変わっていく。
「えーっと、では、クラス対抗リレーのメンバーは決定しました。綱引きは鳳くんの代わりに瀬尾さんで異論はないですか?」
気づけばみんなの興味が瀬尾さんに移っている。
瀬尾さんはすっかり毒気を抜かれたのか、私に対してなにかを言ってくることもなく、バツが悪そうな表情で席に着いた。