溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
「実は今日、竹下さんをお呼びしたのは、きちんと謝っておこうと思ったからなんです」
「謝ると言うと? ……あぁ、遅刻のことなら気にしていませんよ。待つのは苦にならないほうですから」
柔和な表情をした顔の前で手をひらひら振る竹下に、「違うんです」と否定する。
竹下は、それじゃなに?といった表情で美華を見た。
「父が無理を言ってお時間を作っていただいたのに申し訳ないのですが、今回のお話は辞退させていただきたいんです」
「……え? そう……なんですか」
竹下も乗り気ではないだろうと思っていたが、どことなく残念そうに見える。
「鶴岡部長から美華さんの写真を見せてもらったときに、こんな美人さんが僕に会ってくれるのか?と不思議には思ったんです」
「び、美人なんてとんでもない……!」
どう見たら自分がそのカテゴリーに入るのか。もしかしたら竹下の分類は、許容範囲が人の何倍も何十倍も広いのではないか。
それに竹下のほうこそ、爽やかイケメンだからモテるのでは。好青年の雰囲気が身体中からにじみ出ている。