溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
お茶で喉を潤した後、沙也加が直球で攻めてくる。
「どうって……」
出会ってまだ一週間と経っていない。少しずつ歩み寄りつつあるものの、結婚を決めたふたりにしてはまだまだ距離の遠さは否めない。
「素敵な方だと思います」
「そうではなく、好きか嫌いかを聞いております」
涼やかな声がぶれることなく真っすぐ美華に届く。
好きか嫌いか。
博人と過ごした、これまでの数日間を思い返す。
何事にも迷いを感じない行動は頼もしく、おおらかで屈託がない。美華はそれにぐいぐい引っ張られるような、とても目まぐるしい毎日だった。
これまでの人生では考えられないほど濃厚な時間を過ごしているだろう。
はっきりとした言葉こそないが、ストレートに気持ちをぶつけてくる博人を嫌だと感じたことは一度もない。
「好きか嫌いかでしたら、好きなほうだと思います」