溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
その次の夜も、そのまた次の夜も、博人はソファで寝たのだ。
広いベッドに美華ひとり。彼がいつ来てもいいようにベッドの隅に寄っていたけれど、毎朝目覚めても寝た形跡はなかった。
キスはするが、身体を求めるほど美華への愛情は育っていないのだろう。
ホッとする反面、ちょっとした寂しさを感じるのも事実だった。
沙也加は美華の答えに喜ぶでもなく、「そうですか」のひと言だけだ。
「沙也加さんも博人さんをお好きなんですよね」
今度は美華が尋ねる。
沙也加は目をぱちくりとさせ、ひと呼吸おいてから首を傾げた。
「どうなのでしょう」
マンションまでやって来て結婚を迫るから、てっきり好きなのだと思っていたが。
「私、これまで男性にはずっと振られっぱなしなんです」
「……沙也加さんが?」
こんなにも美しく、おしとやかな女性が振られるとは信じがたい。