溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

「博人が親の意見には刃向かったのは初めてじゃないのか」
「そうね。ちょっとわがままなところのある息子ですけど、どうぞよろしくね」
「は、はいっ」


ピンと伸ばした背中のまま、腰を折り曲げる。


「わがままは余計だよ」


博人の意義に、真琴がふふふと笑う。
仲が良さそうな家族に見えた。
大企業の会長という肩書きから想像した、頭の固そうな保守的な夫婦とはまるで真逆だ。

あっさりと受け入れられ拍子抜けだった。


控え室を後にすると、ブラックスーツを着込んだ二十代後半の男性が静かに駆け寄ってくる。


「社長、少し打ち合わせをしたいのですが」
「じゃ、手早く頼む」


美華に「この辺で待ってて」と言い置き、博人が男性と離れていく。

博人が一緒ならまだしも、美華には完全にアウェー。
当然、どこを見ても知らない人ばかり。心細さが半端ない。

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