溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

(私、こんなにも博人さんを好きになっていたんだ)

胸の奥がチリチリと焼けつくように痛い。

虚ろな気持ちでレストルームから出ると、そこで思わぬ人物と出くわした。
あの竹下だった。
カフェで博人の取材だと言っていた男性も一緒だ。

美華に気づいて、上から下まで目線が行き来する。


「美華さんもこのパーティーに? 今日はまた一段とお綺麗ですね」
「そのようなことは……」


首を振りつつ、「今日はどうしてここへ?」と続けた。
竹下は出版社勤務。このパーティーに招待されているわけではないだろう。


「同僚の付き合いです」
「藤堂社長の取材がまだ終わってないんです。就任するところを写真に収めておこうと思いましてね」


竹下の言葉を受けて、同僚の男性が答えた。
途中でドバイへの出張も入ったから、余計に取材期間が延びたのかもしれない。

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