溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

竹下の気持ちはうれしい。でも……。


「ごめんなさい。彼を好きなので、竹下さんとの未来は考えられません」


博人と結婚できるかどうかは別として、美華の心は彼以外に入る余地がない。
そんな状態で、ほかの人の気持ちに答えるのはできない。


「そこまできっぱりと断られると、かえって清々しいですね」
「……ごめんなさい」
「いいえ。お時間を取ってくださってありがとうございました」


タイミングが良いのか悪いのか、竹下が立ち上がったところで博人が現れた。打ち合わせは終わったようだ。


「美華」


名前を呼ぶ声が、どことなく不機嫌に聞こえる。
竹下と一緒にいる美華を見た博人が機嫌を損ねるのは、これから自分の妻として紹介するというのに、公然とほかの男といるとはどういうわけだといったところだろう。
彼の心を揺さぶっているわけではない。

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