溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

「では、続いて社長からみなさんにご紹介したい方がいらっしゃるそうです。では、社長、お願いいたします」


司会者が美華を見た。
壇上の博人が振り返り、おいでと手を伸ばす。

この場だけは、博人の妻として務めあげなければならない。それが美華の役割だ。
目が眩むようなライトを浴び、ゆっくりと足を進める。
この時だけは堂々とした姿を見せておかねばならないと、震える足に念を込めた。

博人の隣に立ち、真っすぐ前を見る。強烈に浴びせられるライトのおかげで、招待客の姿がよく見えないのは救いだった。


「この度、私、藤堂博人はこちらの鶴岡美華さんと結婚することになりました」


会場内で悲鳴にも似た女性たちの声があがる。


「これからはともに手を取り、精一杯精進していくつもりです。どうぞよろしくお願いいたします」


博人に倣って美華も頭を下げたのだった。

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