溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

パーティーが終わり、博人と会場を出ると、彼は大勢の取引先の人たちに囲まれた。
その中には竹下と一緒にいた出版社の同僚もいて、熱心になにかを問いかけてはメモを書き留める。テレビのリポーターさながらだ。

博人から少しずつ離れ、その輪を抜けると、美華は遠巻きにその光景を眺めた。

美華の大一番はとうとう終わり、これから最終章を迎える。
華やかな世界にいる彼のそばには、これ以上一緒にいられない。
最後の言葉を博人からもらわずして、美華はゆっくりと踵を返した。

ホテルを出て、夜の街に足を進める。

行くあてがあるわけではない。ただ、じっとあの場にいられず、少しずつでもいいから不釣り合いなあそこから離れたかった。

博人と出会ってからの二週間は、美華の人生の中でもダントツで目まぐるしく、そして楽しい日々だった。それこそ夢のようだったと言ってもいいだろう。
束の間でも極上の男から愛に似た扱いを受け、今日は自分まで極上な女になれたのではないかと錯覚するほどだった。

きっとこれは、それまで恋愛に恵まれなかった美華への神様からのプレゼントだったのだろう。

この記憶を糧に、これからもがんばりなさい。
そう言われたような気がした。

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