溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
「もしかして美華さん?」
そんな声をかけられたのは、大きな交差点で信号待ちをしていたときのことだった。
振り返ると、そこにはどこかで会った記憶のある女性が立っているではないか。
(誰だったかな……?)
その顔を見ながら、急いで記憶の引き出しを探る。
「博人が連れてきてくれた美華さんでしょう?」
そう言われて、ようやく思い出す。
以前、彼に連れていってもらった隠れ家的なフレンチレストランのオーナーだ。
名前はたしか……。
「真知子さん、ですよね?」
彼女の顔がパッと華やぐ。
「あぁやっぱりそうだわ! で、どうしてこんなところをひとりで? 博人は一緒じゃないの?」
「そう、ですね、はい……」
「……なにかあった?」