溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

歯切れの悪い美華からなにか察知したか、真知子は顔を覗き込んだ。
口を開けば甘えから涙が零れそうな気がして、唇をキュッと結ぶ。


「近くに車を停めてあるから行きましょ」
「え?」


真知子は美華の背中に手を添え、歩きだした。


「あのっ」
「いいからいいから。どうせ暇してたの」


店はどうしたのだろうか。今日は金曜日。混雑する日ではないのか。
不思議に思いながらも断るのもままならず、言っていた通り近くに駐車してある真知子の車に乗り込んだ。


「うちのお店に行きましょうか。今日は臨時休業なの。ガスレンジが故障しちゃってね」


なるほど、それで金曜日の夜だというのに真知子が街にいたわけだ。
月曜日まで店を休まなければならないのと、真知子は肩をすくめた。


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