溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
彼女の優しい目を見て、胸がキュッと詰まる。鼻の奥がツンとした。
「博人とケンカでもした?」
いいえと首を横に振る。
ケンカならよかったかもしれない。関係の修復は簡単だ。
「たぶん、結婚はしないです」
正しくは、できないだ。
「え? どうして?」
驚いたように目をまたたかせる真知子に、ホテルで見聞きしてきたままを話して聞かせた。
頭の中を整理して言葉にしたつもりが、時系列は前後するし、事実だけではなく自分の感情まで織り交ぜるしで、まとまりが全然ない。
それでも真知子は黙って耳を傾け、美華の話をうんうんと聞いてくれた。
「美華さん、勘違いしてる」
最後まで聞いた真知子が、きっぱりと否定する。