溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

真知子に言われ、バッグの中を漁る。取り出したスマートフォンには、博人からの着信が何十件も入っていた。
マナーモードにしていたため気づかなかったのだ。


「電話が……」
「きてたでしょ?」


真知子が唇の両端をニッと上げる。


「早くかけ直してあげたほうがいいわよ。じゃないと彼、発狂しちゃうかも」


それはさすがにオーバーだと思いながら、履歴の博人の名前をタップする。ワンコール鳴らないうちに彼が出た。


『美華! 今どこにいるんだ!?』


切羽詰まった声を聞いて、締めつけられるように胸が痛い。すぐに声が出せなくて、博人からもう一度呼びかけられた。


『美華? 頼む、答えてくれ』


美華の目から涙がひと筋、頬を伝った。

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