溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

「いたら見合いは受けないし、キミに結婚しようなんて言えないだろう?」


確かにそうである。それをしたら結婚詐欺のようなものだ。


「ごめんなさい。藤堂さんなら、いそうだなって思っただけですので」
「いや、いいよ」


結婚を申し出ておいて嘘はつかないだろうから、本当にいないのだろう。

(でも、こんなにも恵まれた容姿のうえに社長なのに。強引なところはあるけど、性格だって悪くはなさそうだし。なんにしても女性は選び放題だろうに、どうして私?)

このままいくと七不思議のひとつに数えられるかもしれない。


「それと藤堂じゃなく博人でいいから」
「〝博人さん〟? はい。わかりました」
「そこは素直に応じるんだ。てっきり〝下の名前でなんて呼べません〟って反発されるかと思った」


意外そうに目を丸くする。

これが普通の状態だったらそうしていたかもしれない。でも今はそれどころではないのだ。
< 38 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop