溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
「いたら見合いは受けないし、キミに結婚しようなんて言えないだろう?」
確かにそうである。それをしたら結婚詐欺のようなものだ。
「ごめんなさい。藤堂さんなら、いそうだなって思っただけですので」
「いや、いいよ」
結婚を申し出ておいて嘘はつかないだろうから、本当にいないのだろう。
(でも、こんなにも恵まれた容姿のうえに社長なのに。強引なところはあるけど、性格だって悪くはなさそうだし。なんにしても女性は選び放題だろうに、どうして私?)
このままいくと七不思議のひとつに数えられるかもしれない。
「それと藤堂じゃなく博人でいいから」
「〝博人さん〟? はい。わかりました」
「そこは素直に応じるんだ。てっきり〝下の名前でなんて呼べません〟って反発されるかと思った」
意外そうに目を丸くする。
これが普通の状態だったらそうしていたかもしれない。でも今はそれどころではないのだ。