溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
強行突破のキスに翻弄されて


数分後、車が広い駐車場で止まった。


「俺が設計した建物」


窓から見えたのは、近未来を感じさせる曲線美の真っ白な建物だった。


「えっ、ここを博人さんが!?」


視線を建物から彼へ勢いよく移す。
美華も来たことのある美術館なのだ。

仕事柄、美術館巡りは普段からしている。絵は描かないが、児童文学や絵本のインスピレーションを得るためにたまに訪れる場所のひとつだ。


「ただ単に設計会社だと言うより、実際に設計した建物を見せたほうがわかるだろう? 俺という人間を知ってもらうには手っ取り早い。少し降りようか」


言うなり博人が運転席から降り立つ。
着物のため美華がもたもたしていると、博人は手を添えて降ろしてくれた。


「よし、行こう」


いったん離れた手がぐいと結ばれる。

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