溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
博人はハハハと高らかに笑いながら運転席に乗り込んだ。
パワーウィンドウを下げ、そこから顔を出す。
「それじゃ美華、明日の夜までに準備をよろしくな」
「はい」
素直に返事ができる自分が、なんだか不思議だ。
車が走りだすのを待っていると、博人はドライブにいれたギアをいったんパーキングに戻した。
「忘れるところだった」
なにかと首を傾げた美華は伸ばされた彼の腕に引き寄せられ、一瞬のうちに唇が重なる。避ける隙もなかった。
すぐに離れた博人は、してやったりといった顔だ。
「今度こそ、明日な」
あっけにとられる美華にとびきりの笑顔を残し、博人の車は小さくなっていった。