溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
大急ぎで駆けつけたため、喉がカラカラだったらしい。
「実は結婚することになって」
気持ちを抑えて淡々と言う。
「誰が? 妹さん? ……はもうしてるか」
「私」
「私って、どこの私?」
鈴は知り合いがいるわけでもない店内をキョロキョロと見渡した。
「だから私」
「……え? 美華? もしかして、この前言ってたお父さんの部下と会ったの?」
鈴には、父親に紹介されそうになっていると話していたのだ。
首を横に振り違うと答える。
「話が見えないんだけど」
鈴は興味津々にテーブルに身を乗り出した。
「話すとややこしいんだけどね」