溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
そう前置きして、今日までの三日間を話し始める。
鈴に聞かせながら、自分はとんでもない決断をしたのではないかと改めて思った。
彼とはまだ丸一日も一緒に過ごしていない。
鈴は美華が話している間、ほぼずっと目を丸く見開き、口も挟まずに聞き入っていた。
美華が逆の立場でも、そうなっただろう。
美華が話し終えるのと同時にふたり分の日替わりが運ばれてきたが、それそっちのけで鈴はようやく口を開いた。
「びっくりしたけど、美華らしい気がする」
「え? どこが? どのへんが?」
本人にしてみればさっぱりだ。
「直感で動くあたり。絵本の原作家として生きていくって決めたときも、たぶん大丈夫ってアバウトな感じなのに自信ありありだったし」
それは直感で動くというよりは、楽観主義者的な発想ではないか。
どちらにしても博人同様に、自分は意外とプラス思考なのかもしれない。
「それにしても、大学時代に誰にもなびかなかった美華がとうとう陥落したかと思えば、ビルドポートの社長ときたかぁ」