溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
「鈴の意地悪。誰にもなびかなかったんじゃなくて、誰にも相手にされなかった、でしょ」
大学入学まで地味だったのも、それまで恋愛経験のないことも鈴には秘密にしてきたが、一緒に過ごした大学時代は隠しようがない。
「やだ、なに言ってるの? 数々の男たちの恋愛フラグを無邪気になぎ倒しておいて、気づかなかったとは言わせないよ?」
「……なにそれ」
美華がポカンとすると、鈴は派手にため息をついた。
「まさか本気でわからなかったの? はぁ、彼らの憐れなこと……」
それなら教えてくれればよかったのにと思うのは、わがままだろうか。
でも当時の自分を思い返してみても、それらしいモーションに身に覚えはない。
「ま、それはいいとして、ビルドポートの社長なんてよくゲットしたなぁ」
「鈴、知ってるの?」
「あたり前じゃないの。私の勤め先、建設業でしょ」