溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
そうだった。自分が会社勤めではないからか、そういった情報にはどうしても疎くなる。
建設業界ならば、設計会社も密接な繋がりがあるだろう。
「敏腕のイケメン若社長で有名だよ」
「そ、そうなんだ」
想像はついていたが、リアルに知っている鈴から聞くと、恐れ多い人との結婚を決意してしまったのだと焦る気持ちが大きくなる。
「うちの会社にも熱烈なファンがいるから気をつけたほうがいいよー?」
鈴は、ニヤニヤとからかうような目で美華を見た。
(やだな。ほんとに大丈夫なのかな……)
今さらながら不安になる。
「ごめん、余計なこと言ったよね。あちらが熱烈に結婚したがったのなら大丈夫大丈夫」
不安を煽っておいて、それはない。
美華が唇を尖らせると、鈴はペロッと舌を出しておどける。
「ささ、冷めちゃうから食べよう」
ナイフとフォークを持ち、早速ひと口頬張った。