溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

「予定より遅くなって悪かった」
「いえ、大丈夫です。お忙しいでしょうから」


八時でも早いほうだと思ったくらいだ。仕事が終わってからと言っていたから、九時を過ぎるのも覚悟していた。


「そんな物分かりのいい言葉じゃなくて、もっと早く会いたかったとか言ってもいいんだぞ?」
「そんなこと!」


考えてもいなかったが、もしも思っていたとしても美華には言えないだろう。
博人はいたずらっぽく笑ってジョークを飛ばした。


走ること三十分。
車はきらびやかな光を放つ高層ビルの地下へ滑り込んだ。外観を見るだけで高級物件なのはわかる。


「まさかとは思いますけど、ここですか?」
「そうだよ」


博人があっさりと返しているそばから、目の前にずらりと高級車が現れる。
駐車されている車は、どれも実物を見たこともないようなものばかり。ライトを浴びて輝く様はミニカーのおもちゃが並んでいるようで、まるで現実味がない。

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