溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

「近くには江戸時代の武家屋敷を由来とした公園や美術館があるから、絵本の執筆にいい刺激になるんじゃないか」


壮大な光景を前に、博人の説明に美華は「はぁ」と間抜けな返事になった。


「さぁ行こう」


大きな手提げバッグを肩にかけ、キャリーバッグを引く博人の隣を歩く。近くにあったセキュリティゲートを抜けてエレベーターに乗り込むと、パネルにはなんと四十階まで表示されていた。

(そんなに高いビルなの!?)

博人がタッチしたのは三十五階だった。
なんでも一階にはホテルのフロントのようにコンシェルジュが二十四時間待機しているらしく、困ったことがあればなんでも相談できるというから驚きだ。

軽やかな音を立ててエレベーターが止まり、博人に続いて降り立つ。

ベージュを基調とした通路は温かみがありつつ、クラシカルな形状のシャンデリアやウォールランプが重厚な印象を与えている。ふかふかの絨毯は、真綿の上を歩いているような感覚だった。

感嘆のため息をつきながら博人のうしろに続く。

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