溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
「ここ」
彼が暗証番号を入力し、美華は大きく開かれたドアから中へ入った。
白い壁にダークブラウンの天井。モダンな玄関フロアは、そこだけで生活が可能なほど広い。
博人にあがるように言われ、靴を揃えて足を進める。
長い廊下の向こうに青い空間が見え、そこに一歩踏み込んだ美華は思わず「わあ!」と悲鳴にも似た声をあげた。天井まで続く大きな窓の向こうにキラキラと光る海が広がっていたのだ。青く見えたのは、夜景だったようだ。
電気をつけなくても月明かりが照らすおかげで明るい。
高い場所から見下ろしているせいか、街にぽっかりと浮かんでいるような錯覚に陥った。まるで異空間にでも来てしまったかのよう。
東京湾が近いらしく、そこに浮かぶ船の明かりも美しい。
「すごいところに住んでいるんですね」
豪華な生活はしていないと言っていなかったか。
「そうでもないよ」