溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
博人はサラッと否定するが、この景色も空間も身近にあるのは普通ではない。
「今日からは美華もここに一緒だ」
気づけば彼がすぐうしろにいて、美華の両肩に手を乗せた。
(やっぱり信じられない。こんなところに博人さんみたいな人と暮らすなんて……)
長い長い夢を見ているのではないか。
そう考えるほどに非現実的だ。
「さて、美華の部屋へ案内しようか」
そうして連れられたのは、リビングの脇にある螺旋階段を上がった先だった。
マンションの一室に二階まである贅沢な造りには、ただただ感心するばかり。
ふたつ扉があり、博人はその右側のドアを開けた。
「作家先生だからデスクは必要だろうと思って、急いで用意した」
「作家先生なんてやめてくださいっ」
急いで訂正する。
売れっ子ならまだしも、美華はそうではない。