溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
「三浦から聞いたぞ。沙也加さんとの約束をすっぽかしたそうだな」
潤一郎は金曜日から昨日の月曜日までの四日間、上海へ出張だったため、見合い当日は不在だったのだ。
ホテルで待ちぼうけをされた沙也加は博人が来ないと自身の父親へ連絡し、その父親が潤一郎の秘書である三浦に連絡を入れていた。
「そのことに関しては言い訳の余地もありません」
博人は素直に頭を下げた。
「いったいいつまで逃げ続けるつもりだ。約十日後に迫った就任パーティーまで時間がないんだぞ」
これまでに潤一郎が紹介しようとした女性の数は、ざっと両手で数えるほど。どれも『まだいい』と会おうともしなかった。
軽く息を吐いて、潤一郎が険しい顔で続ける。
「もう逃げも隠れもしません。結婚することになりましたから」
「……意味がわからないな」
潤一郎の眉がピクッと動いた。