溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
「鶴岡美華さんという女性と結婚します。昨日から一緒に暮らし始めました」
「話がまったく見えないんだが?」
「会長の希望通り、パーティーに間に合うように相手を見つけたと言っているんです」
話を吟味するかのように、潤一郎が博人の目をじっと見上げる。
「沙也加さんはどうするんだ」
「お断りします」
潤一郎に対してきっぱりと拒絶の意思を示したのは、もしかしたら人生初かもしれない。
「そんな簡単な話ではないぞ」
「私はこれまで、会長の思う通りの道を歩んできました」
博人は、子供の頃から工作が大好きだった。段ボールを切っては細工を施し、色づけをして世界にたったひとつのモノを作る。
頭の中で想像したとおりにできたときの喜びは、設計図を描くようになってからも同じだった。
さらに極めたかったその設計スキルを諦め、一線を退いて社長となったのだ。
「結婚相手くらいは自分の思うままにさせていただきます」