溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
茶色いサラサラヘアに癖のない爽やかな顔立ち。ネクタイこそ着けているが、スーツではなくチノパンにジャケットという少し着崩したスタイルだ。
正隆に聞きそびれていたが、見た感じから美華と同じくらいの年齢だろう。
約束の時間にはぎりぎり間に合ったが、竹下は結構早くから着いていたようだ。アイスコーヒーのグラスが汗をかき、コースターを濡らしていた。
美華も同じものを注文し、それが運ばれてくるのを待ちつつ話を進める。
「竹下さん、今日はお時間を作ってくださり、ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げ、彼の前に腰を下ろす。
「それと先日は」
「急な仕事で帰るはめになってすみませんでした」
美華の言葉に続けて、竹下に先に謝られてしまった。
「あ、いえ」
さて、どう切り出そうか。どちらが罪深いかといったら、完全に美華のほうだ。