百物語は終わらない
ほんの一瞬、窓の外が夜のように暗くなった気がした。冷たく凍えてしまいそうな風が頰を撫でた気がした。教室のざわめきも彼方へ消える。まるで禁断の扉を開けてしまったかのように、私の体を伝う汗は冷や汗へと変化する。

「陽葵?どうしたの?」

気がつけば、夏の茹だるような暑さもざわめきも戻っていた。呆然とする私に三人は話しかける。

「あ、何でもないよ〜」

気のせいか、そう思いながら私は笑った。その時「ねえ」と話しかけられる。聞いたことのない声だった。

振り向くと、見たことのない女の子がいた。冬子みたいに知的な雰囲気だからか、ベージュの清楚な感じの学校の制服がよく似合っている。分厚いメガネをかけた三つ編みの女の子。

「さっきから楽しそうな話をしてたから、つい話しかけちゃった」

その子はにこりと笑う。やはり見覚えがない。それは私だけじゃなくて、冬子たちも同じみたいだ。

「えっと……あなたは……?」

私が訊ねると、女の子はまたにこりと笑う。その笑顔はどこか可愛らしい。
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