冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
けれど、なにかを思い出したのか、飯島ひとりが足早に彩実のもとに戻ってきた。

そして、彩実が腰かけている椅子の後ろに身を隠すように膝をつく。

「さきほど小関様からお電話がありました」

「え、忍君から? あの、お開きまでに間に合いそうですか? 今日は式が始まる前から忍君のことがずっと気になっていて……」

彩実は後ろを振り返り、急かすように飯島に問いかけた。

「大丈夫です。お仕事が終わって急いでこちらに向かっているそうです。あと三十分ほどで着くとおっしゃってましたから、お開きまでには十分間に合います」

「よかった。昨日は私も遅くまで一緒だったんだけど結局終わらなかったから。おかげで今日忍君に任せるしかなかったから申し訳なくて」

小関家具の商品とのコラボが話題となっているモデルハウスのオープンを来週に控え、昨日も遅くまで現場での作業が続いていた。

彩実も結婚式前夜だというのに、日付が変わるまで確認作業に追われていた。

寝室用に手配していたベッドが部屋の内装イメージと微妙に違うとわかり、急遽別の商品に変更することになったのだ。

幸いにも新しく採用された商品の在庫が倉庫にがあり、早速今日搬入されることとなった。そのため、今日は朝から忍が現場に出向くことになったのだ。

もちろん忍も披露宴の招待客のひとりだが、搬入される商品は忍が設計、デザインした新商品。

忍が立ち会わないわけにもいかず、披露宴に遅れて出席することになったのだ。

「次のドレスは私の一番のお気に入りなので、小関様が間に合うようでよかったです」

「そうですね……。だけど、忍君はなんでも誉めてなんでもおいしいと言うタイプなんです。忍君がなにかをけなすような言葉を口にするのを見た記憶もないんです。だからきっと、私がなにを着ても誉めてくれるはずです」

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