冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
淡々とした諒太の声に、彩実はぴくりと震えた。
忍とは仕事でのつながりもあり、毎日のように電話で話しているし、もちろん諒太に聞かれてまずい話はしていない。
それでも、今このタイミングでの忍からの電話に、彩実は居心地の悪さを感じた。
いら立ちもすっと収まっていく。
「出ないのか? 俺に遠慮することはないぞ。それとも、やっぱり御曹司のことが忘れられないとか」
「まさか」
挑発する諒太に彩実はむきになり、スマホを手に取り急いで電話に出た。
そして、これみよがしにスピーカーモードにすると「もしもし」と言いながらスマホを諒太の膝の上に置いた。
「は?」
予想外のことに諒太は目を丸くするが、彩実はそれを無視して諒太の足元に腰をおろした。
『もしもし? 彩実? 今いいか?』
「うん。大丈夫だけどどうしたの? 慌ててる?」
忍の声が上ずっているようで、なにかあったのかと彩実のほうこそ慌てて答えた。
『慌ててるというより興奮してる』
「え? なに、どうしたの」
言葉通り興奮し声も大きな忍に、彩実はさらに不安になり、諒太の膝にしがみついてスマホに話しかけた。
『俺、コンクールで大賞を獲ったんだよ。それで、やっとフランスの学校にも留学できることになった』
「本当? きゃー、おめでとう。そろそろ発表だと思って気になってたんだけど。大賞なんてすごい。今まで頑張ってきた甲斐があったね」
忍が大賞を獲ったのは、世界各国から有名無名問わず、大勢の家具職人たちが参加している国際的に権威のある家具デザインのコンクールだ。
副賞でフランスにある家具全般の勉強をするための有名な学校に二年間留学できるということで、その人気は高い。
今年も世界各地から多数の応募があったようだが、その中で忍が大賞を受賞したと聞き、彩実はスマホに向かって何度もおめでとうと繰り返した。
『そこで、彩実に頼みがあるんだけど』
彩実がようやく落ち着いたころ、忍の神妙な声が聞こえた。
彩実は諒太の膝の上で頬杖をつき、スマホに向かって口を開いた。
「うん。なに? あ、もしかして向こうで暮らす家のこと?」
『そう。そのことなんだ。前にもお願いしたけど、フランスの親戚にどこか紹介してもらえないかな』
忍とは仕事でのつながりもあり、毎日のように電話で話しているし、もちろん諒太に聞かれてまずい話はしていない。
それでも、今このタイミングでの忍からの電話に、彩実は居心地の悪さを感じた。
いら立ちもすっと収まっていく。
「出ないのか? 俺に遠慮することはないぞ。それとも、やっぱり御曹司のことが忘れられないとか」
「まさか」
挑発する諒太に彩実はむきになり、スマホを手に取り急いで電話に出た。
そして、これみよがしにスピーカーモードにすると「もしもし」と言いながらスマホを諒太の膝の上に置いた。
「は?」
予想外のことに諒太は目を丸くするが、彩実はそれを無視して諒太の足元に腰をおろした。
『もしもし? 彩実? 今いいか?』
「うん。大丈夫だけどどうしたの? 慌ててる?」
忍の声が上ずっているようで、なにかあったのかと彩実のほうこそ慌てて答えた。
『慌ててるというより興奮してる』
「え? なに、どうしたの」
言葉通り興奮し声も大きな忍に、彩実はさらに不安になり、諒太の膝にしがみついてスマホに話しかけた。
『俺、コンクールで大賞を獲ったんだよ。それで、やっとフランスの学校にも留学できることになった』
「本当? きゃー、おめでとう。そろそろ発表だと思って気になってたんだけど。大賞なんてすごい。今まで頑張ってきた甲斐があったね」
忍が大賞を獲ったのは、世界各国から有名無名問わず、大勢の家具職人たちが参加している国際的に権威のある家具デザインのコンクールだ。
副賞でフランスにある家具全般の勉強をするための有名な学校に二年間留学できるということで、その人気は高い。
今年も世界各地から多数の応募があったようだが、その中で忍が大賞を受賞したと聞き、彩実はスマホに向かって何度もおめでとうと繰り返した。
『そこで、彩実に頼みがあるんだけど』
彩実がようやく落ち着いたころ、忍の神妙な声が聞こえた。
彩実は諒太の膝の上で頬杖をつき、スマホに向かって口を開いた。
「うん。なに? あ、もしかして向こうで暮らす家のこと?」
『そう。そのことなんだ。前にもお願いしたけど、フランスの親戚にどこか紹介してもらえないかな』