冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
ここ最近忍と晴香が婚約したとマスコミが何度か騒いでいたが、そのたび忍は「結婚なんてするわけないだろう」と言っていた。
けれど、今目の前にいる晴香は、まるで忍とは相思相愛の恋人同士のように寄り添い、満面に笑みを浮かべている。
忍はそれを拒むことなく、彩実に気まずげな視線を時折向ける。
「誰に反対されても、私は忍君と結婚します。まさか私に白石ホテルの御曹司との縁談が持ち上がるとは思わなかったから慌てて彩実に押し付けて、彩実に行くはずだった忍君との縁談も潰したのに。あきらめるわけがないでしょう?」
リビングのソファに忍と並んで座っている晴香は、当然だとばかりにそう言って胸を張った。
忍にぴったりとくっついている晴香の姿をまじまじと見ながら、今晴香が口にした言葉に彩実は言葉を失った。
忍と話していたはずのスマホから突然晴香の声が聞こえ、彩実は訳が分からないながらもスマホに向かって「今すぐふたり揃って説明しに来て」ときっぱりとした声で言ったのだ。
それから二時間が経った今、諒太とともに新居であるマンションに帰ってきた彩実は、リビングのソファに忍と晴香を座らせ、話を聞いているのだ。
聞けばこの一年、晴香はことあるごとに忍の工房を訪ね、食事に誘ったりふたりででかけようと声をかけていたそうだ。
「俺も最初はびっくりしたんだけど、彩実の姉さんだし、そうそうむげにはできないから何度か食事に行ったんだ。あ、そのときに写真を撮られたりして、マスコミに注目されるようになったんだ」
申し訳なさそうに話す忍の言葉に、彩実は血の気が引いていくのを感じた。
晴香のことだ、彩実を困らせるために忍を振り回していたに違いなく、そんなことに巻き込んでしまった忍に申し訳ない。
「私と姉さんのせいで、迷惑をかけてごめんなさい。それに、コンクールで念願の大賞を獲ったのに、水を差すようなことを……」
彩実はソファから立ち上がり、忍に深く頭を下げた。
そして、晴香の前に立つと「いい加減にして」と声を荒げた。
「私のことが気に入らないからって忍君を巻き込むことないでしょう。私のせいで姉さんが恋人と別れたのは事実だけど、だからって忍君を傷つけないで」
彩実は両手を強く握りしめ、怒りのあまり晴香を殴ってしまいそうになるのをぐっと我慢した。
けれど、今目の前にいる晴香は、まるで忍とは相思相愛の恋人同士のように寄り添い、満面に笑みを浮かべている。
忍はそれを拒むことなく、彩実に気まずげな視線を時折向ける。
「誰に反対されても、私は忍君と結婚します。まさか私に白石ホテルの御曹司との縁談が持ち上がるとは思わなかったから慌てて彩実に押し付けて、彩実に行くはずだった忍君との縁談も潰したのに。あきらめるわけがないでしょう?」
リビングのソファに忍と並んで座っている晴香は、当然だとばかりにそう言って胸を張った。
忍にぴったりとくっついている晴香の姿をまじまじと見ながら、今晴香が口にした言葉に彩実は言葉を失った。
忍と話していたはずのスマホから突然晴香の声が聞こえ、彩実は訳が分からないながらもスマホに向かって「今すぐふたり揃って説明しに来て」ときっぱりとした声で言ったのだ。
それから二時間が経った今、諒太とともに新居であるマンションに帰ってきた彩実は、リビングのソファに忍と晴香を座らせ、話を聞いているのだ。
聞けばこの一年、晴香はことあるごとに忍の工房を訪ね、食事に誘ったりふたりででかけようと声をかけていたそうだ。
「俺も最初はびっくりしたんだけど、彩実の姉さんだし、そうそうむげにはできないから何度か食事に行ったんだ。あ、そのときに写真を撮られたりして、マスコミに注目されるようになったんだ」
申し訳なさそうに話す忍の言葉に、彩実は血の気が引いていくのを感じた。
晴香のことだ、彩実を困らせるために忍を振り回していたに違いなく、そんなことに巻き込んでしまった忍に申し訳ない。
「私と姉さんのせいで、迷惑をかけてごめんなさい。それに、コンクールで念願の大賞を獲ったのに、水を差すようなことを……」
彩実はソファから立ち上がり、忍に深く頭を下げた。
そして、晴香の前に立つと「いい加減にして」と声を荒げた。
「私のことが気に入らないからって忍君を巻き込むことないでしょう。私のせいで姉さんが恋人と別れたのは事実だけど、だからって忍君を傷つけないで」
彩実は両手を強く握りしめ、怒りのあまり晴香を殴ってしまいそうになるのをぐっと我慢した。