冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
続いて聞こえてきたのは、争うような物音と平手打ちでもしたような鋭い響き。
かすかに悲鳴のようなものも聞こえてくる。
その直後。
『先生が来てるって聞いたんだけど』
ノックの音とともに聞こえてきたのは、まぎれもなく晴香の声だった。
「え、これって……」
静かな部屋に、誰もが予想していなかった音声が流れだし、彩実は息をのんだ。
それは二年前彩実を床に押し倒したときの男の声だ。
脅すような声音からは狂気のような怖さも感じられ、とっくに忘れていたと思っていた恐怖が彩実の心によみがえった。
「彩実? この声って、あの人の声よね。それに私の声……」
とっさにICレコーダーの電源を切って呆然とする晴香に、彩実は「あ、あの……」と繰り返し、必死で首を横に振る。
忍は流れてきた内容に顔をしかめ、彩実に同情するような視線を向けた。
「違う。まさかこれが残っているとは思ってなくて……。消したと思ってたのに残ってたなんて」
真っ青な顔で慌てた彩実は、ソファから転げ落ちるようにして晴香のもとに這っていくと、彼女の手からICレコーダーを取り返そうと手を伸ばした。
けれど、彩実の背後から伸びた諒太の手が一瞬早くそれを手に入れた。
「諒太さん、やだ、それ、返して」
彩実は諒太に向かってこれまでになく甲高い声をあげ、ICレコーダーを取り戻そうとするが、興奮しているのか立ち上がろうとしてもうまく足に力が入らず、何度もラグに倒れこんだ。
「彩実、いいから落ち着け。レコーダーは止めてあるから安心しろ。もう、お前を傷つけた男の声を聞くことは二度とないから」
諒太は、体を小さく丸めてうずくまる彩実の体を背中から抱きしめた。
華奢な体を小刻みに震わせ、嗚咽する彩実を落ち着かせようと、ただぎゅっと抱きしめる。
「彩実、思い出したくないだろうけど、聞かせてくれ。晴香さんの恋人は浮気をしていたんだな。お前はそれをひとりで問いただしていて……暴力を振るわれたってことでいいんだな」
怒りに震える諒太の声に、彩実はこくりとうなずいた。
「ちきしょう……っ。逃げられないとかふざけるな」
諒太は今にもその男を見つけ出して殺してしまいそうな切羽詰まった表情を浮かべ、悔しそうに言葉にならない声をあげている。
かすかに悲鳴のようなものも聞こえてくる。
その直後。
『先生が来てるって聞いたんだけど』
ノックの音とともに聞こえてきたのは、まぎれもなく晴香の声だった。
「え、これって……」
静かな部屋に、誰もが予想していなかった音声が流れだし、彩実は息をのんだ。
それは二年前彩実を床に押し倒したときの男の声だ。
脅すような声音からは狂気のような怖さも感じられ、とっくに忘れていたと思っていた恐怖が彩実の心によみがえった。
「彩実? この声って、あの人の声よね。それに私の声……」
とっさにICレコーダーの電源を切って呆然とする晴香に、彩実は「あ、あの……」と繰り返し、必死で首を横に振る。
忍は流れてきた内容に顔をしかめ、彩実に同情するような視線を向けた。
「違う。まさかこれが残っているとは思ってなくて……。消したと思ってたのに残ってたなんて」
真っ青な顔で慌てた彩実は、ソファから転げ落ちるようにして晴香のもとに這っていくと、彼女の手からICレコーダーを取り返そうと手を伸ばした。
けれど、彩実の背後から伸びた諒太の手が一瞬早くそれを手に入れた。
「諒太さん、やだ、それ、返して」
彩実は諒太に向かってこれまでになく甲高い声をあげ、ICレコーダーを取り戻そうとするが、興奮しているのか立ち上がろうとしてもうまく足に力が入らず、何度もラグに倒れこんだ。
「彩実、いいから落ち着け。レコーダーは止めてあるから安心しろ。もう、お前を傷つけた男の声を聞くことは二度とないから」
諒太は、体を小さく丸めてうずくまる彩実の体を背中から抱きしめた。
華奢な体を小刻みに震わせ、嗚咽する彩実を落ち着かせようと、ただぎゅっと抱きしめる。
「彩実、思い出したくないだろうけど、聞かせてくれ。晴香さんの恋人は浮気をしていたんだな。お前はそれをひとりで問いただしていて……暴力を振るわれたってことでいいんだな」
怒りに震える諒太の声に、彩実はこくりとうなずいた。
「ちきしょう……っ。逃げられないとかふざけるな」
諒太は今にもその男を見つけ出して殺してしまいそうな切羽詰まった表情を浮かべ、悔しそうに言葉にならない声をあげている。