冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
「それもそうよね。彩実さんはまだ二十五歳でしょう? こんな七歳も年上の愛想のかけらもないおじさんとのお見合いなんて気が進まないわよね」

「お、おじさん……そんなことはありません」

「そう? 気を遣わせてごめんなさいね。でもね、わが息子ながら可愛げがなくて、昔から一緒にいても楽しくなかったのよ」

順子はそう言って大きくため息を吐いた。

その様子に諒太は憮然とした表情を崩さないまま順子に視線を向けた。

その冷ややかなまなざしに如月家三人は息を詰めるが、順子が気にする様子はない。

「でもね、一応うちのホテルの跡取りでしょう? みんなが甘やかすから仕方がないかなとあきらめてたのよ。でも、でもね」

順子はそこでいったん口を閉じ、テーブル越しに彩実たちに体を寄せ、切実な声で言葉を続けた。

「この間、お兄様の咲也さんにお会いしたんだけどまだ二十九歳だというのにとてもしっかりしてらっしゃるし、とても明るくて私の話にも笑顔で付き合ってくださったのよ。後継者という同じ立場なのに諒太とは大違い。本当、驚いたわ。うちの息子は後継者という立場のせいで不愛想でかわいくない男になったんじゃないのね」

まくし立てるように話す順子の勢いに、彩実はぽかんとする。

もともと高級ホテルグループの社長夫人という気取ったイメージはなかったが、初対面の自分にまで息子への不満を口にするとも思っていなかった。

「順子、みなさん驚いているからそのへんにしておきなさい」

まだまだ言い足りないような様子の順子に、それまで黙って聞いていた伸之が声をかけた。

声が震えているようだと視線を向けると、笑いをこらえるように肩を震わせていた。

「たしかに咲也君は順子に優しかったな。ずっと順子の話に付き合ってくれていたし」

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