冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
家を建てるという一生に一度あるかないかの大きな出来事に立ち会える喜びと、少しでもよりよい将来を作る作業への緊張感。

その第一歩となるモデルハウスでの仕事は、彩実にとっては天職とも思えるやりがいのある仕事なのだ。

今回のこの展示場のリニューアルに関しても、一年前に決まって以来積極的に携わってきた。

最近ではおしゃれな住宅展示場も多く、恋人たちのデートスポットにもなっている。

そんな流れもあり、彩実は小関家具とのコラボという企画を打ち出したのだ。

何度も小関家具に通い、そして自社の上層部に企画書を提出して実現に向けて力を尽くした。

『若い世代に人気の家具を揃えた家を実際に目にし手に触れることで、家を建てたい、こんな家に住みたいという意識が高まり、契約につながる』

その強い思いを載せた企画書には小関家具のプロフィールも詳しく書かれ、三十ページに及ぶそれは、社内でも評判になった。

彩実は目の前に建つモデルハウスを見上げ、満足げに微笑んだ。

周りのメンバーたちも同様だ。

役員会の承認が得られれば、すぐにでも次の段階に進める。

これからのことを考えて、さらに気持ちは弾んだ。

「これでようやく今日は安心して寝られそう」

彩実はタブレットを持ったまま大きく体を伸ばした。

そのとき、彩実の傍らに、営業部の芝本和斗が並んだ。

「よっ。久しぶりだな」

今年入社七年目の芝本は、持ち前の明るさと人当たりのよさ、そしてなにより豊かな商品知識によって抜群の営業成績を誇っている。

昨年の契約件数は全国の営業マンの中でもベスト五に入る好成績。

女性に人気の甘く整った顔も相まって、社内でも有名な営業マンだ。

そして、彩実の兄・咲也の大学時代の親友でもある芝本は、仕事で顔を合わせるたび彩実に声をかけるのだ。

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