冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
そして、エコバッグやハンドタオルなど、今回リニューアルされたグッズが次々と並び、彩実と忍は興味深げにそれらを眺めた。

「あ、俺、如月ハウスの社員じゃないけど、見てもいいのかな」

忍が庄野に問いかけた。

「大丈夫です。どの会社でも製作しているありふれた商品ばかりで目新しいものはありませんので、お気遣いしていただかなくて結構です」

庄野は表情を変えることなく、真面目な声で忍に答えた。

冷たい言い方にも聞こえる庄野の口調に、忍は一瞬戸惑うが、彼はいつもこんな調子だと思い出し「だったらよかった」とホッとする。

「あのー小関さんはモデルハウスのオープンのときにはいらっしゃるんですよね?」

「マスコミもたくさん来るので、小関さんは狙われると思いますので気を付けてくださいね」

「あ、それと。来週モデルハウスチームの打ち上げがあるので小関さんも是非参加してください」

庄野の後ろに控えていた女性たちが次々と忍に声をかける。

よく見れば普段以上にメイクはばっちりで、声も高くかわいらしい。

脇に押しやられた庄野は面倒くさそうに三人をちらりと見る。

四人の様子に彩実は苦笑した。

庄野が彩実と忍の打ち合わせに顔を出すのを知った女性三人が、用もないのについてきたらしい。

忍の人気は相変わらずだなと、彩実はおかしくなる。

からかうように忍を見ると、女性たちの思いなどまったく気づいていないようで、タブレットにスケジュールを呼び出し、来週の予定を確認している。

「あー、来週は出張もあるから無理だな。せっかく誘ってもらったのに申し訳ない。かわりに今回うちから参加した職人たちに声をかけておくよ。普段工房にこもって作業に集中してるだけだから、たまには新鮮な顔ぶれで酒を楽しむのもいいだろうし。あ、モデルハウスオープンのときにはなんとしてでも顔を出すから」

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