冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
あっさりと断られ、女の子たちは明らかにがっかりし、肩を落とす。

よっぽど忍と一緒に飲みたかったらしい。

けれど、忍がその思いに気づく気配はまったくなく、机に並ぶ販促グッズを一つ一つ手に取り、じっくり見ている。

女性に関心がなく仕事中心の日々は学生時代から変わっていないようで、彩実はホッとする反面、少し心配でもある。

いずれ小関家具を背負う立場ともなれば、結婚相手にはそれなりの家柄の女性を選ぶよう親戚から強いられることはないのだろうか。

小関家具はここ数年海外からの注文も増え、家具店というよりも大規模な家具会社と言ったほうがしっくりくる。

忍自身もコンクールに作品を出品するなどして、さらに創造力を高める努力をしたり、いずれはフランスに留学して力をつけたいと言っている。

今後、小関家具がますます発展するのは確実であり、忍の結婚もそれに影響されるのではないかと、彩実は気にかけている。

「このマグカップの取っ手のアールの部分、絶妙の幅で、俺好きだな」

グッズのひとつであるマグカップを手に取り、忍はしげしげと見る。

それは、如月ハウスのイメージカラーである深紅のラインが入ったマグカップだ。

陶器製で重みを感じるが、丸みを帯びたフォルムが愛らしい新作グッズだ。

「あ、それは僕がデザインしたんです」

庄野が驚いたように声をあげた。

「親戚に陶芸作家がいて、教えてもらいながらデザインしたんですけど。大量生産ではなくひとつひとつ職人さんに焼いてもらった自信作です。今回、小関家具さんとのコラボが実現すると聞いて、家具と同じようにこのカップも丁寧に作ろうと決めて」

説明しているうちに声に力が入り、庄野の表情も誇らしげに変わる。

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