冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
「俺も気になって電話で聞いたんだけど、小関家具の件、役員会ではなんの異論も出なかったそうだぞ。あの化石みたいに頭が固いじいちゃんたちをどうやって丸め込んだんだ?」

「丸め込んだなんて、失礼ですよ。ただ、まあ。こんなときくらいは奥の手を使おうかなと」

乾いた声で笑う彩実に、芝本は大げさに眉をひそめた。

「ということは、小関家具を使いたいと社長に直談判したのか?」

彩実との距離を詰め、近くで作業中のメンバーを気にしながら芝本はささやいた。

「いえ、えっと……社長ではなくて、会長を丸め込み……じゃなくて、直接説得したんです」

彩実も小声で答えた。

「はっ? それはなんとも、すごいな。奥の手というより、最後の切り札だよな」

驚いて一瞬息をのんだ芝本に、彩実は苦笑する。

「最後かどうかはわかりませんけど、まあ、切り札ですね。一応、私は会長の孫なので」

「そこまでして小関家具を使いたい気持ちはわからなくもないけど、あの昔ながらの頑固なじいさんがよくOKしてくれたな。役員会で異論がひとつも出ないってことは、あらかじめ会長からの根回しがあったってことだろう」

「……そうですね」

「そうですねって、お前、他人事みたいに言うけど、大丈夫なのか?」

芝本は呆れたそう言うと、彩実を心配し、ため息を吐いた。

普段の愛想がよく、明るく軽い様子とはまるで真逆だ

「で、小関家具を採用する代わりになにか交換条件でも出されたんじゃないのか?」

「さすが、鋭い」

察しがいいのは普段どおりだなと、彩実は芝本を見上げた。

「やっぱり、おじいさま……ではなく。会長の性格をよく知ってますね。まあ、お見合いをしろって命じられたんです」

「見合い……。うーん。なるほど。で、相手は誰だ?」

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